方法序説を読んで

「我思う、故に我あり」という文言を聞いたことがある人は多いと思う。私もその一人であったが、それがどの本の言葉かは知らなかった。そんなときに知ったのがこの方法序説である。作者はデカルト。精神と肉体は完全に2つに分けられるという物心に言論の提唱者である。

 

今回は書評というより、推薦文という体で書かせていただく。この本、その名前の通り、「真理」を自ら探り出せるための方法を述べたものである。「真理」とは「もっともらしいこと」ではなく、神が作り出した唯一の物事の本質である。もっともらしいことは言うにたやすいのに対し、「真理」を見つけ出すことは難しい、とデカルトは述べる。そのためには、他人が発見した定理や考えは自分の手で実際に行わなければ信じてはならない。そうしなければ、他人の「もっともらしいこと」にだまされて真理が見いだせなくなってしまうから、だそうだ。

 

デカルトの生きた時代とは異なり、現代は学問も発展し、また情報も溢れているため、すべての知識を自らの手で確認するというようなことは不可能である。しかし、情報、知識に疑問を持ち、熟考することは可能である。そうしなければ、真理に近づくことができないばかりか、他人のもっともらしいことに踊らされ、他人の手駒となり、自我が失われてしまうことにもなりかねない。ぜひ、一読を。

 

 

方法序説 (岩波文庫)

方法序説 (岩波文庫)